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トップランナーインタビューVol.1
『あっ!』と驚く印刷技術で印刷をもっとおもしろく
株式会社SO-KEN 浅尾考司

プロフィール:あさお・こうじ 1973年大阪府生まれ。2002年内装工事を手がける株式会社装建管理設立。2004年から発光インキの開発に着手し、2009年に社名を「創造」と「研究」から一字ずつとったSO-KENに変更。「あっと驚く印刷で世界を変える」をモットーに、アナログならではの五感に訴える機能性印刷を追求する

創業は印刷ではなかった!?
石原
SO-KENはどんな会社ですか?
浅尾
実は元々印刷関連の会社ではなく、内装工事会社(リフォーム)でした。ですが競合会社が非常に多く、「オンリーワンの仕事がしたい」と思うようになり、「壁紙に鮮やかなプリントをして、オリジナルの壁紙ができたら売れるのでは?」と考えたりしたのですが、すでに大手企業が着手していました。他に良いアイデアが無いかと模索していたところ、偶然にも面白い「インク」に出会いました。そこから「TRICK PRINT」として手掛けるようになり、印刷業界に関わるようになりました。
石原
印刷関連の会社ではなかったのですね。業態変革をされたとは知りませんでした。
浅尾
オンリーワンの仕事をしていきたいという強い思いで仕事をしてきた結果、現在扱っている「TRICK PRINT」にたどり着きました。
1枚の白紙から始まった「TRICKPRINT」

石原
印刷業界にシフトしたきっかけは?
浅尾
イデアに行き詰っていた時、知り合いの方から、真っ白の紙を手渡されました。

「何も書かれてない紙だけどなんだろう?」と不思議に思っていると、ブラックライトを当てた瞬間、鮮やかな図柄が浮かび上がってきて、その鮮明さに驚きました。

「これだ!」と感じたのですが、課題が2つあり、1つ目はフルカラー再現ができないこと、2つ目はインクの耐候性でした。

取り寄せたインクはブラックライトを照射し続けるとわずか8時間で退色し、建材としては使えるレベルではありませんでした。そこで国産インクを開発しようと考え、発光希土類の研究をしていた国立大学の教授や、民間の会社を訪問し、高耐候のインク開発を成功させました。

これを用い、壁紙で空間をチェンジさせることを模索し始めたのですが、壁紙の某大手会社(トキワ)と協業、エプソンの担当者の方に、壁紙に拘らず魅力的な商材として、印刷業界へアプローチしてはどうかとアドバイスを頂きました。そこで思い切って、社名を変更して、一気に内装業から印刷業へ業態変革をしました。現在もこの時の人脈が、新たな商品開発を行える基盤となっています。
印刷の基礎知識から、独学で学び手に入れたもの

石原
研究開発はどのように進められたのですか?
浅尾
ブラックライトインクは光の三原色で色を構成している加法混色ですが、無謀にも、色の原理を知らないままにやり始めてしまった私は、C(シアン)にB(ブルー)を、M(マゼンダ)にR(レッド)を、Y(イエロー)にG(グリーン)を入れました。

そうです。モニター上ではOKなのですが、印刷されたものとは全然違うものになってしまいました(笑)。そこで印刷のプロに話しを聞きに行き、「インキのベースの色を間違えてないか?CMYKだよ。そこに違う色を入れたら、そりゃ色は形成されないよ。」と印刷の基本を教わり、知識が必要だと痛感し独学で勉強を始めました。また、ブラックライトインクの販売促進の為に、印刷会社が新規機械を購入しなくていいようにしようと研究を重ね、完成させました。
石原
そんな大変な苦労をされて、完成させたブラックライトプリント、主にどのような場所で使われているのでしょうか?
浅尾
実績としては、長崎ハウステンボス、ユニバーサルスタジオジャパン、サンリオピューロランドに採用されています。光の三原色は色域が広いため、モニターで見ているような奥行きを感じることができ、夜景の写真印刷などはとてもきれいで、「これが印刷で出来るんだ!」って感動すると思います。本社にある商談室の真っ白な壁紙は、ブラックライトで変化をするんですよ。ぜひ一度、本社(大阪)にも見に来ていただきたいです。
面白アイデアはどこから?社員の小林さんにもご一緒に伺いました。

石原
現在リリースされているこれらのおもしろ印刷、企画提案、デザインなども社内でされているのですか?
浅尾
本職ではありませんが、10数名の社員全員が、企画・営業と幅広く業務をこなしていて、基本なんでも対応できます。
石原
内製化されている新規商品の開発は、実際にどのように進めているのでしょうか?
浅尾
基本は、私が発案します。自分の感性に触れた、「これ面白いな、すごいな。」と思えたものを深堀し、形にしていきます。
石原
お客様の求める販促ツールの企画提案は大変そうですが社員のみなさんも交えた企画会議、面白そうですね。
小林
そうですね、意見を言わせてもらえる社風なので面白いです。僕は以前他の印刷会社で働いていましたが、SO-KENの商材と出会い、面白い印刷商材に触れていく中で、この会社で働きたいと考えるようになり、転職したのが入社のきっかけでした。
特殊ではない特殊プリント、それが最大の魅力。

石原
主力商材の印刷技術は、何をポイントに着目されているのでしょうか?
浅尾
私たちが扱っているのはトリック印刷で、特殊印刷ではありません。
商品のキーになっているのは「トリック」で、可変性の無いものが可変する、その面白さを追求しています。可食印刷は、「えっ?印刷したものを食べられるの?」というトリックなんです。
石原
浅尾社長の考える、「印刷の魅力」とは何だと思いますか?
浅尾
印刷はまだチャレンジできる幅があり、私たちの創意工夫次第で、これから伸びしろがある業界だと感じています。私たち人間は、デジタルは可変して当たり前、アナログは可変できないと先入観を持っています。だからこそ、アナログ・紙に印刷したものが可変すると、驚いてくれます。「人」だから驚いてくれるのです。トリック印刷は、相手が人間だからこそ成り立つ手法であり、私はここに印刷の魅力や価値を感じています。人間の五感を刺激し価値を与えられる、そんな仕事をしています。
石原
最後に社員の小林さん、社長のスゴイところ&SO-KENの魅力を教えてください。
小林
社長のスゴイところは「発想力」ですね。そして、「これ!」と感じたこと・ものを絶対に形にするんです。社長の発想力と実現力、尊敬しています。
コンセプトが「サプライズ」であるSO-KENの魅力は、面白いことに一番近い距離で関われることだと感じています。サプライズを仕掛ける立場として、関わっている企画自体が、面白いこと・モノを扱っているのですから、面白いはずですよね。
そしてありきたりですが、完成した制作物をお客様へお持ちする際、喜んでいただけることが、一番やりがいを感じます。特に最近印象に残っているのは、当社のソーラー印刷を使った、NTTドコモ様の広告です。太陽光にあてると無職からフルカラーに発色し「日本の宝島」が浮かび上がるトリックとなっており、Before&Afterのインパクトは多くの反響を頂き、朝日新聞特別賞を受賞しました。嬉しかったですね。
入学を考えている方への一言アドバイス。
浅尾
若い頃は何も考えずに動いていたから…(笑)。そうですね、起業を考えている方に向けてと言うわけでなく、一般的に資本主義の仕組みを勉強しておくと、自分を有利な方向に持っていけると思います。雇用された経験がない学生の内は、あまり身をもって感じることは無いかと思うのですが、社会に出ると自分の価値は自分で決められるのではなく、その成果・結果で会社から評価されます。評価されるためには、資本主義の仕組みをよく理解したう上で、行動することが必要になってきます。どう進むにしても、自分の行動指針の原理を知っておくと、社会人になってから役に立つと思います。
小林
印刷に興味を持ってる人や、これから知りたい人に私がお勧めするのは、「デザインのひきだし」(プロなら知っておきたいデザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌)と、「AdGang」(アドギャング:国内・海外のプロモーション事例のデータベースサイト)でしょうか。「面白い」から始められて、知識を得られると思いますのでお勧めです。
石原
様々な人に、SO-KENのトリック印刷を知って頂き、サプライズを体感してもらえる、そんな会社にしていきたいと考えていらっしゃる、浅尾社長と小林さん、本当にありがとうございました。